スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小説【エピソード2 昔のこと】ー時計椅子ー

小さい頃。私が中学生の運動会で学年リレーの選手にえらばれた時の話。
私たちは小さな町の土手で走っていた。

「イッちゃん!待って!・・・ぜえぜえ・・もう息が無理かも。待って!!」
イッちゃんが走りながら振り返って私に言う。
「楓は体力ないなぁ、本当に。じゃあ、少し休憩ね。」
イッちゃんが私の方に来て近くの土手で座った。
「ほら、楓も座りなさいよ。せっかく休憩してるんだからさ。」
「う、うん。ありがとう」
「っ!いいのよ!別に!あたしが好きでやってるんだから!!」
イッちゃんは照れながら大きく深呼吸をした。





「おーい。楓ー?聞こえてる?せっかく声かけてやってるんだから起きろー。」
「伊代・・・?・・・違う、あほか。起きてる。いや、今起きた。」
「あれれ~伊代?寝てたよね?今寝てたよね?」
「うざい。」

起きると私は、高ノ宮総合病院の特別事務室で寝ていて静(あほ)のせいで目が覚めた。

「珍しいね~楓が寝ちゃうなんて。笑えるよ。」
「なぜお前はここに?」
「御曹司・・・いや、この病院の息子だからかな?」
「あほに聞いた私が馬鹿だった。」

まさか伊代の夢を見るとは・・・

「で、伊代って誰?」
「言うか、あほ。」
「んーじゃあ。」

ぴっ、ぴっ。

「・・・あっ!もしもし?安さん?あのさ、楓の近くにいたことのある伊代って子探してくれない?もちろん、給料アップしちゃうからさ。」
「やめろ。言うから。」
「・・・安さん、やっぱり給料なしで。んじゃ、ばいばーい。」
「お前は軽いな。いつ見ても。」
「えーでも楓のことは一途だから。」
「黙れ、変態。」
「もう、年上にそんな口利いちゃって!」
「同い年だろ!だめだ、あほと話していたらあほがうつる。」

私は特別事務室にある白いホワイトボードを見て、今日の掃除を担当する関井さんの部屋に早足で向かった。
(あほも後から、いや同じペア掃除なのでついてきてうっとうしい掃除の時間でした。)




伊代、いまどこにいるんだろう?
あの時以来私は伊代に会っていない。あれで最後。

私が伊代に「待って」といって以来伊代は学校からも町からも姿を消した。

電話もメールも知らない。無い。無いんだ、伊代の物が。残っているものが。

後から親の話を聞くと両親が作った借金のせいで、祖父の家に行ったらしい。でも、伊代の祖父の家が分からない私にとっていらない情報だった。

あの時から、私はひとりぼっちだった。(いや、単にぼっちとかじゃないから。ここ重要ね。)

まぁ一人でも別に変わらないんだけどな。


「じゃあ行こうか。」と静が掃除が終って一旦事務室に向かう途中に呟いた。
「何しに?どこに?」
「どこにって、決まってるじゃないの!それはもちろん・・・昼食ダヨっ☆」
「・・・・・」
「そんな、哀れな目で見ないでよ。痛いとか思ってるような気がするんだけど・・・。」
「さすが、病院の息子さんだ。大当たり。」


心は揺れながら私の昔のことを少しずつ蘇らした。

このときまでは、至って普通の大学生活だったのに。
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。